キッチンからお送りします。

キッチンにて、思った事やった事、書き連ねています。

「関西弁と標準語のバイリンガル」という境遇

今週のお題「方言」



関西の方の多くはきっと、標準語、嫌いですよね…。特に、関西人なのに標準語喋るヤツとか、関東の人が真似する変な関西弁とか。嫌いですよね…。あくまで体感ですが。でもでも、イキってるわけじゃないんです。誤解なんです!という人間もいることを知っていただけたら…と思っています。(中には標準語とか気にしないよ〜、な関西人の方もいらっしゃると思います。ご気分悪くしたらごめんなさい。)

 
 

私は、関西弁と標準語のバイリンガルです。関西で生まれ育ったけれど、親が関東出身で標準語を常に話していたから、家の中では標準語を話し、学校や外では関西弁を使う、という子供時代を過ごしました。

 
関西弁と標準語は、基本、家に入ったら切り替えられるのですが、関西弁モードの時でも、私の関西弁は、イントネーションは関西弁で、ちょこっと標準語まじり。
本来の関西弁「あんな〜、〇〇やんか〜」
私の関西弁「あのさ〜、〇〇やんか〜」
更にひどい時 「 あのさ〜、〇〇じゃんか〜」もはや字面は関西弁ではない…。
 
こういう喋り方になっていることは、小学生くらいから認識していましたが、特にいじめられるとか、話しにくいとかもなく、困ることはありませんでした。
しかし、実は、無意識下では無理をしていた様です。その事に気がついたのは就職してからでした。
 
 
私は、大学卒業後、東京の会社に就職しました。東京に引っ越して数日経った頃、妙に開放感を感じたのです。一人暮らしだからとか、そんな理由ではありません。何ならちょっとホームシックになりましたし。何というか、心の底の方が、フワッと軽くなる様な浮遊感。その正体は、言葉でした。東京に住み始めてから、言葉は標準語モードになっていたのですが、これがとっても楽だったのです。言いたいことが言えている感じ。そのままの自分で居られる感じです。自分の気持ちをそのまま、何のフィルターも通さず言葉にできている感じがするんです。例えるなら、海外留学時に微妙なニュアンスが英語で伝えられずもどかしいとか、海外のジョークを日本語に訳すと面白くない、の真逆、そんな感じです。分かりづらい例えですね(笑)。けれど、ホントにそんな感覚で、微妙なニュアンスをやたらと説明しなくても伝わるし(アホとバカのニュアンスとかは関西と関東では逆、と言いますよね)、ボケが冴えるのか、人から笑いも簡単に取れました。とにかく、関西弁を話さないでいいだけで、こんなに自分が楽にいられるとは思ってもいなかったし、関西にいた頃、関西弁を話す事が自分にとっては、そんなに負担になっていたんだ、という事に初めて気が付きました。
 
言葉って、やっぱり、それぞれにニュアンスがあって、例えば「あかん」と「ダメ」は同じ意味だけど、違うんですよね。私はきっと「ダメ」っていう方が自分の心の中の言葉なので、「あかん」に変換すると、微妙に気持ちとズレが生じる。何か違うなぁ、と少しずつ蓄積される。完全にどこかからの移住者ならはっきりと自覚できたと思いますが、私の場合はそうではなかったので、この蓄積を社会人になるまで、自覚していなかったのでした。
 
そうして東京に住んでいる間はずっと、標準語モードで過ごしていましたが、8年後、関西に転勤になり、実家に戻る事になりました。困ったのはここからで、転勤先の職場に行くと、関西弁モードが発動しなくなっている事に気がついたのです。どうやら、私の脳は、仕事の時は標準語モード、という仕様になってしまったらしく、仕事時に関西弁を喋るのが非常に難しく感じました。しかし、私が居た会社では、関西弁を喋らないと浮いてしまう雰囲気だった為、私はどんどん孤立していきました。恐らく、関西人のくせに標準語を話すことが、イキってる奴、と捉えられてしまっていて、元々関東出身者ならそんなに浮いてしまうことはなかったと思います。また、私が居た職場は、関西の中でも特に閉鎖的な文化が根強い場所なので、特にだったかもしれません。もしかしたら、言葉の理由だけじゃなかったのかも知れませんけど…。
 
この転勤の後、浮いてしまったからではなく、全くの別件で2社転職したのですが、この2社ともでパワハラを受ける事になりました。具体的なパワハラの内容はまた別の機会にしますが、どうやら、やはり、標準語モードの喋り方が鼻についてしまうらしいです。それがキッカケでパワハラを受けるようになっていったんだと思います。こちらも分かってはいても、どうしても仕事=標準語モードになってしまうんでね …と随分困りました。でも、相手は変えられませんから、今では、なるべく関西弁モードと標準語モードを切り替えられる様、日々訓練しております。と言っても相変わらず、家の中では標準語モードですし、買い物中とかも標準語モードです。関西弁モードの時間が多いと息苦しさを感じてしまうので、仕方ありません。
 
 
残念ながら、私はこれまで、全く同じ境遇の人に出会う機会がなく、このもどかしさや困難を分かち合ったことがありません。きっと自分の息子が喋る様になったら、その第1号となることでしょう。あぁ、でも、息子が周りから浮いちゃったら嫌だなぁ。今からなるべく関西弁を教えよう。でも、関西の方も、どうか、イキっているわけじゃないけど標準語になっちゃう関西人がいる事、お手柔らかに見ていただけると助かります。
 
 
関西に戻ってきた頃、関西弁を取り戻そうと、こんなの聞いてました。
京ことばの辞典
京都の文化のいい面も悪い面も教えてくれる気がします。例文がやたら厳しめで、「あんた、こんなおイタばっかりしてたら、あきまへんぇ〜」みたいなことばかり言ってくださいます。叱られたい方は是非。